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2020年7月 4日 (土)

ことばと生活と新聞と(134)

贋物の音声がはびこる


 新型コロナとは関係なく、以前からテレビで贋物の音声がはびこっていました。音楽やお笑い番組などで、実際にその場で起こった歓声や拍手などではなく、効果音を取り入れている番組が多くなっていました。効果音と言うと肯定的な言葉になりますが、実際にはそこにない音を追加するのですから、これは状況の作り替えであり、意図的な改変です。内容の異なったものに仕立て上げるのであり、贋物づくりです。こういうことがなぜ責められないのだろうと思っていました。
 相撲やプロ野球などが無観客で行われると、これまでのような大観衆のもとでは聞き取れなかった音が聞こえて、新鮮な気持ちになりました。相撲の行司などの声、力士の声やぶつかったときの音など、野球のバットやボールから出る音、ボールがミットにおさまる音、あるいは選手同士の掛け声などです。無観客ゆえの臨場感が生まれます。
 そのようなことに反して、わざと音声を作り出そうという営みがあることを知りました。こんな記事がありました。

 「いけー」「頼むぞ」。23日のプロ野球・千葉ロッテマリーンズとオリックス・バファローズの試合。観客のいないZOZOマリンスタジアム(千葉県美浜区)に歓声が響く。千葉ロッテの井上晴哉選手が九回に同点打を放つと、拍手や声援はひときわ大きくなった。
 活用されたのは楽器メーカー大手ヤマハ(浜松市)が開発した「リモート応援システム」。スマホなどのアプリから「歓声」「拍手」など4種類のボタンを押すと、右翼席のスピーカー3台から、あらかじめ録音された約100種類の男女の声援や拍手がランダムに再生される仕組みだ。ボタンを押した人が多くなるほど音量も大きくなる。
 (読売新聞・大阪本社発行、2020年6月27日・夕刊、3版、8ページ、有留貴博・新田修)

 「あらかじめ録音された約100種類の男女の声援や拍手がランダムに再生される仕組み」というのですから、その球場で出た音(これまでの試合で録音された音)ではなく、作り出した贋物の音です。しかも、「右翼席のスピーカー3台から」出る音というのは、相手チームにとっては、試合をかき乱される音です。
 この記事を書いた記者は、このような応援作戦を肯定的に捉えているようですが、実際の観客の声援とはまったく異なります。試合を妨害する行為です。こういうことが拡大していけば、純粋にスポーツを楽しむことが阻害されかねません。スポーツ精神に反する行為であるのですから、排除しようという声があがることになるかもしれません。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、人々の助け合おうとする態度や、自分から進んで行動を慎もうという姿勢などが、私たち国民の持つ特性として認識されました。しかし一方で、この機に乗じて金儲けを企てたり、相手に打ち勝とうと作戦を練ったりする者が現れています。スポーツの場にふさわしい行為とは思えません。どのようにすることが社会に貢献することになるのかということをよく考えてほしいと思います。

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