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2020年7月11日 (土)

ことばと生活と新聞と(141)

相手の配偶者をなんと呼ぶか


 「ご主人」「旦那様」「奥様」などという言葉は、男性中心社会を反映してようだから使いにくいと感じている人がいます。私も同感です。けれども、日常的な話し言葉の世界においてまで、その言葉を追放して、「夫」「妻」のような言葉を使わなければならないとは思いません。
 「ご主人」「旦那様」「奥様」などに代わる言葉を、今の日本語から見つけ出そうとしても、なかなか難しいと思います。外国人の真似をするような外来語の導入は嬉しくありません。
 日常的にインタビューなどをする任務のある人は、相手の配偶者をなんと呼ぶかということを大きな問題と感じているようです。
 こんな記事を読みました。

 取材で初対面の人と話すときに迷うのが、相手の配偶者の呼び方です。「ご主人」「奥様」といった表現に上下関係を思わせる響きがある中で、他にどんな呼び方があるのか。 …(中略)…
 私は「お連れ合い」を使っています。「『お連れ合い』と言ってくれてうれしかった」というメールを取材の後でもらったことがある一方、「え? 主人のことですか?」と聞き返す方もいました。誰もがぱっと口にする言葉にはなり得ていない分、使い方の難しさも感じます。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年7月7日・朝刊、13版S、11ページ、「論の芽」、田中聡子)

 この問題提起について、引用文で「…(中略)…」としたところに、ラジオパーソナリティーの綿谷エリナさんに聞いたことをまとめた部分がありました。けれどもこのインタビューは「相手の配偶者をなんと呼ぶか」という論点から外れたことも多く語られていますので、引用しません。
 まず私自身のことを書きます。私は年齢を重ねている人間ですから、話し言葉で「ご主人(さん)」「奥さん」を使うことに抵抗を感じておりません。
 「お連れ合い(の方)」という表現に抵抗感はありません。「連れ添う」という言葉は古くから使われていますから、「お連れ合い」は自然な表現です。古風な表現で、使う人が少なくなっていることは否めませんが、これから増えていってもよい言い方だと思います。ただし、夫婦関係にある男女の一方から見た相手を指す言葉ですから、夫を指すのか妻を指すのかわかりにくい場合もあるでしょう。
 「パートナーの方」という表現も増えてきているように思いますが、使いたくはありません。仕事のパートナーとか、研究者としてのバートナーという言い方もできる言葉で、相棒というような意味です。配偶者の意味に使いたくはありません。しかも、この言葉には、正式な結婚の手続きをしていない相手とか、同性同士の組み合わせの相手とかの意味にも使われています。
 配偶者の名前がわかっているときは、名前を使うこともあります。「吉田先生は……」と言って夫のことを指したり、「明子さんは……」と言って妻のことを指したりしますが、親しい場合でないと使いにくいかもしれません。

 この記事の話題は「相手の配偶者」の呼び方ですが、ちょっと話題を広げます。
 自分の配偶者については、私は「家内」と言うのがクセになっていますが、改まった場では「妻」と言います。私の配偶者は、私のことを「主人」と言っていますが、改まった場では「夫」と言っています。
 私よりかなり年若い人男性が、自分の配偶者のことを、「奥さんに相談してから返事をします」というように「奥さん」と言うのを聞いてとても驚いたことがあります。「わし(私)の嫁はん」というような、ちょっとふざけたような言い方は耳慣れたものでしたが「奥さん」には驚きました。けれども、この言い方を耳にすることが増えてきたように思います。
 女性が、自分の配偶者のことを、「田中は酒を飲みません」というように姓で言うことにも驚いたことがあります。しかも、結婚して20年とか30年の人が口にしています。
 相手の配偶者や自分の配偶者を呼ぶ言葉は、すぐに望ましい言葉が見つかるようには思えません。ただ、外来語(外国語)から答えを見つけ出そうとすることだけはやめてほしいと思います。

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