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2020年7月21日 (火)

ことばと生活と新聞と(151)

「負けてはいない」という言葉

 何事によらず、東京一極集中が進んでいます。新型コロナウイルスの感染者数も、北海道や福岡県で一時的に多くなることがあっても、いつまでも続く中心は首都圏の1都3県です。首都圏の人たちが全国へ移動することによって感染が拡大しないようにと祈りたい気持ちです。首都圏以外の人たちは、そんな気持ちを持っているかもしれないと思います。
 コロナ禍でリモートワークが進んでも、それは一時的な現象で元に戻ってしまうのでしょうか。リモートワークを推進して、中央官庁や大企業の地方分散が進まない限りは、東京一極集中はますます進んでいくのかもしれません。東京都知事選挙のことは全国に広く報道されます。日本の中心のことなのだから関心を持ちなさい、と言わんばかりの姿勢です。
 さて、「負けてはいない」という言葉遣いがあります。「負けてはいない」という健気さは称賛すべきでしょうが、この言葉が使われる場面は微妙です。例えば「関西の文化活動は首都圏に負けてはいない」という言葉を聞いたとき、関西が首都圏を凌駕していると受け取る人はいないでしょう。「肩を並べる」とまではいかないときに、実際の状況よりは少し高く評価しようとして使う言葉でしょう。
 何事においても、「東京に負けていない」「首都圏に負けてはいない」という言葉は、多少、あるいは随分と他地域を持ち上げて使う言葉でしょう。東京の巨大化に勝てるものはありません。もちろん、この言葉は、東京と比較するとき限って使う言葉ではありませんが、東京と比較して使う場合は、負けが決まっているけれども、というニュアンスを込めて使われているように感じています。
 テレビ各局が、人気番組の画像を使った「バーチャル背景」を次々と無料で公開している、というニュース記事がありました。東京のキイ局がこんなことをしているという紹介が書かれた後、こんな表現がありました。

 在阪各局も負けてはいない。
 毎日放送は、20年以上つづく午後の名物番組「ちちんぷいぷい」のスタジオ画像をツイッターで配る。 …(中略)…
 関西テレビは、おなじみの局キャラ「ハチエモン」をプッシュ。 …(中略)…
 放送局の舞台裏を見せるのは読売テレビ。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年5月30日・夕刊、3版、6ページ、尾崎希海)

 話題になっている「バーチャル背景」の内容を比較する能力は私にはありません。けれども文章を読んでいると、東京の局については詳しく紹介し、視聴者の反応についても書かれています。「在阪各局も負けてはいない」以下は、東京で書かれた記事に付け足して書かれたものかもしれません。大阪本社以外へは、東京のことだけが配信されたのかもしれません。
 東京と他地域を比較した文章を書く場合、他地域が「負けてはいない」と言うのは、お世辞か過大評価に過ぎないでしょう。それほど東京はどうにもならない大きな存在になってしまっているのです。

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