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2020年7月24日 (金)

ことばと生活と新聞と(154)

どんな大きさの、何に「印刷する」のか?


 「印刷」という言葉は、一般的には、文字や図形などを紙や布などに刷り写すことです。印刷の技術が向上して、今では金属片に印刷したり、チューブや卵の殻に印刷することもできるようになりました。そのような場合に、印刷という言葉を使うことは抵抗感がなくなりつつあります。
 小さな紙片ではなく、縦横それぞれ数メートルの紙などに絵や写真が印刷されることもあります。大きさについても抵抗感はなくなりつつあります。
 けれども、次のような表現を読んだときは、ちょっと抵抗を覚えました。

 最前線で闘うあなた達はヒーローです--。こんなメッセージを荷台に印刷したトラックが、各地を走っている。新型コロナウイルスの対応にあたる医療従事者への感謝の気持ちを届けつつ、感染拡大防止に一役買えたらと、京都の運輸会社が取り組んでいる。 …(中略)…
 同様の動きが広がっている。京都市伏見区の同業者は、吉川さんに10トン車3台の印刷を発注。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年6月10日・夕刊、3版、6ページ、小西良昭)

 これまでの感覚では、トラックに文字や絵をかくことは、それがどのような方法であれ、「塗装する」というような表現をしたように思います。記事には2枚の写真が添えられており、〈医療従事者へのメッセージを荷台に印刷した10トン車〉と、〈「コロナに負けない!!」と荷台に印刷した茨城県の運輸会社のトラック〉という説明があります。
 金属片への「印刷」も、とても大きな紙などへの「印刷」も認めたいと書きましたが、大きな金属でできた荷台へは「印刷」とは言ってほしくないと思うのです。なぜでしょうか。
 どのような方法でトラックの荷台に文字や絵をかくのかは、記事に書かれてはいません。金属片に印刷することの規模を大きくすれば、トラックに印刷することは可能なのでしょう。
 けれども、「印刷」という言葉の持つ意味が、あっと言う間に拡大されてしまいそうで、にわかに認めたくないという気持ちがあるのです。
 もう一つの理由は、印刷は基本的には、同じものをたくさん作るというときに使う言葉のようにも思います。印刷技術を応用して、ただ一つのものを作ったときにも、「印刷」と言ってよいのでしょうか。
 このような言葉遣いを拡大していけば、丸みをもった飛行機の機体にも印刷できるし、複雑に入り組んだ住宅の外壁部分にも、アスファルトの道路の区画指示などにも「印刷」できることになるのでしょう。けれども、そういうことについては、他の言い方を工夫することこそが、本来の言葉の使い方だと思うのです。

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