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2020年7月23日 (木)

ことばと生活と新聞と(153)

Tacoバスとたこフェリー


 明石市は東経135度子午線上に位置する「時の町」ですが、明石海峡大橋でも知られる交通の要衝でもあります。そしてもう一つ、美味しい魚の町でもあります。魚と言えば明石鯛も明石蛸も知られています。明石の代表的な商店街である魚の棚(うおんたな)には、鯛や蛸をはじめ、さまざまな魚介類などが並んでいます。魚の棚では、水揚げされたばかりの蛸が、立って歩くと言われています。大げさな表現ではなく、店先でその様子を目にすることもできます。
 鯛も蛸もどちらも美味しく、明石の代表を鯛にしても、蛸にしてもよいのですが、言葉遣いとしては蛸を取り上げることが多いのです。鯛が高級料理に使われるというイメージであるのに、蛸は玉子焼きに使われて庶民の日常の食べ物と結びついているからかもしれません。地元で玉子焼きと言っている食べ物は、ふんわりとした蛸焼きで、ダシ汁につけて味わいます。大阪の蛸焼きと区別するために、明石焼きと呼ばれることもあります。
 さて、その庶民的な蛸を名にしたのが、かつて明石と淡路・岩屋を結んでいたフェリーボートです。もともとは国道の一部としての役割を担っていたのですが、後に民営化されました。明石海峡大橋の開通によって廃止に追い込まれたのですが、最終段階に愛称として使っていたのが「たこフェリー」という名称でした。
 そして、地域交通(コミュニティ)バスとして明石市が現在、市内を走らせているバスの名称が「Tacoバス」です。
 その「taco」を話題にしている文章がありました。

 しゃれたホテルのバイキングで、タコ形のウインナーを見かけました。傍らの表示プレートに〈taco winner〉と英文字で書いてあったので、おやっと思いました。 …(中略)…
 日本語の「タコ」には可愛らしい響きがあります。一方、英語の「オクトパス」は感じが違います。『ウィズダム和英辞典』第3版によれば〈米英では気味の悪い生物と考えられてきた〉とのことです。 …(中略)…
 可愛らしさはなくなるかもしれません。ホテルの人はそれを直感して、英語でも「タコ・ウインナー」と書いたのかも。 …(中略)…
 もっとも、つづりは「taco」でなく「tako」でいいと思いますが。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年7月11日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 「Tacoバス」には可愛らしい蛸の絵が書いてあります。気味の悪いものなら、愛称に選ぶはずはありません。明石では、蛸は美味しく可愛いものというイメージが漂っているのです。
 文字遣いの「taco」と「tako」とを比べると、やっぱり「taco」の方がスマートな感じがします。ローマ字表記を守って「takoバス」と書くのなら、「たこバス」という仮名書きの方がよいと思います。
 もっとも、明石の隣の加古川市のコミュニティバスの愛称が「カコバス」ですから、仮名書きなら紛らわしい感じがしないでもありません。

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