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2020年7月29日 (水)

ことばと生活と新聞と(159)

「食べ乗り」という言葉


「食べ歩き」という複合語は国語辞典の見出し語にも採用されています。名物料理や美味しいものを、あちこち食べて歩くことという意味です。同時に「食べ歩き」の「き」という発音を「記」と考えて、そのようなことを書いた文章のことを意味することもあります。
 ところで「食べ歩き」という言葉は、食べることと歩くことのどちらに重点を置いた言葉でしょうか。一般的には、2つの動作のうち、後ろに重点があるように思いますが、「食べ歩き」は、歩くことが欠けても、食べることは欠かせないと思います。
 次のような文章を見かけました。

 大阪メトロは27日、スパイスや食材にこだわる大阪発祥「スパイスカレー」」を提供する沿線の37店舗を地下鉄に乗って巡ってもらう催しを始めた。 …(中略)…
 参加店舗は地下鉄8路線からえりすぐった名店や人気店ばかり。同社の担当者は「「食べ歩き」ならぬ「食べ乗り」で個性豊かな1皿を楽しんで」。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年6月28日・朝刊、14版、26ページ、「青鉛筆」)

 「食べ歩き」になぞらえて「食べ乗り」という言葉を使っているのですが、この言葉は、後ろの動作に重点があるように思います。「食べ歩き」と同じように乗ることが欠けてもよく、食べることは欠かせないと考えると、大阪メトロの趣旨に反することになります。食べることをしながら、電車には必ず乗ってほしいということです。
 「食べ歩き」は熟した言葉ですから、食べることに重点が置かれ、「食べ乗り」という新しい言葉は、乗ることに重点が置かれることになっていると思います。
 この催しには特典が付いているようですから、参加者は食べることも乗ることもすると思いますが、言葉遣いの点から感じることを書いたのです。

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