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2020年7月10日 (金)

ことばと生活と新聞と(140)

「掛」の謎が解けた


 長い間、なぜだろうと思っていたことが、ふとした拍子にわかることがあります。ここに述べるのはもう50年以上も昔のことです。
 学生時代のことです。神戸大学の事務室に行ったり、書類をもらったりしたときに、例えば教務掛とか学生掛とかの文字が使われていました。(実際に、教務とか学生とかの言葉であったのかどうかは、昔のことゆえ、記憶があいまいです。)それが教務係や学生係という意味だと思いましたから、誤解はありませんでした。係のことを「掛」の文字で表すことを古い文字遣いだろうと思っていましたが、それ以後、市役所や県庁などの書類などでこの文字遣いに出会うことは無かったように思います。
 井上ひさしさんの連載広告文を集めた、「ことばの泉」という題名の文章がありますが、その中にこんなことが書かれていました。

 「係大学よりも掛大学の方が上」という言い方が受験生の間にあるらしい。言語学の井上史雄さんによれば、昭和二十四年以降にできた新制国立大学の担当職名は「係」、それ以前の国立十大学(北大、東北大、東大、名大、京大、阪大、九大、東京医歯大、東工大、神戸大)だけが「掛」を使用しているそうで、「係大学ウンヌン」はそこからきた言い方。こんなことが国語辞典に書いてあればおもしろいが、これは百科語事典が「掛」かもしれぬ。それとも隠語辞典が「係」かな。
 (井上ひさし、『井上ひさし発掘エッセイコレクション 社会とことば』、岩波書店、2020年4月10日発行、143ページ)

 この話はいつの頃の受験生のうわさ話であるのか、わかりません。「係大学」とか「掛大学」という言葉が今も使われているのかどうかも、わかりません。そもそも、現在も同じような使い分けの文字が踏襲されているのかどうかも知りません。
 それにしても、昭和24年より前にできていた大学と24年以降の大学で使う文字がちがうとは、ずいぶん大げさな話だなぁと思います。
 そういうわけで、私にとっては、ひとつの疑問が解消されたということです。

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