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2020年8月 9日 (日)

ことばと生活と新聞と(170)

「随時」って、どんな時?


 新型コロナウイルスの感染状況によって、商店や公共施設などが開かれる時期や時間帯などに影響が及んでいます。美術館、博物館、文学館の開催内容などを一覧にした記事がありますが、その記事に、「状況は随時変わります 最新情報は各館にご確認ください」と注記されていました。(朝日新聞・大阪本社発行、2020年7月7日・夕刊、3版、5ページ、「美術館博物館」)
 言っていることは理解できますが、この場合の言葉遣いは適切であるのだろうかと思いました。
 例えば「随時お越しください」と言われた場合は、何時に行くかということなどは自由に決めて、好きなときに行けばよいと判断します。「予定は随時、変更します」と言われたら、いつ変更されて、どういう予定になるのだろうかと不安になります。
 新型コロナウイルスの感染状況によって、開館などの予定を変更しなければならない事態が起こることは承知できますが、このような場合に「随時」という言葉を使うのがふさわしいかということには疑問があります。
 「随時」という言葉の説明は国語辞典によって異なるのではないかと予想して国語辞典を開いてみました。

『三省堂国語辞典・第5版』
 時に応じて。気が向いたらいつでも。
『現代国語例解辞典・第2版』
 ①好きなときにいつでも。②その時々。
『岩波国語辞典・第3版』
 ①(好きな時に)いつでも。②(気の向いた時に)おりおり。ときどき。
『明鏡国語辞典』
 ①適当な時に行うさま。その時々。②日時に制限を設けないさま。必要なときにはいつでも。
『新明解国語辞典・第4版』
 ①気の向いた・(必要と認められた)時に、いつでもその事をすることを表わす。②順番・日時などをあらかじめ決めておかず、都合のつき次第何かをすることを表わす。
『広辞苑・第4版』
 ①時に随うこと。臨機。②いかなる時にも。いつでも。

 美術館などの開催予定は、新型コロナウイルスの感染状況を考えながら、あるいは政府や自治体の考えを受けながら変更を余儀なくされるのですから、「随時」という言葉がふさわしいのだろうかと思ったのです。「時に応じて」変更するのはわかりますが、「気が向いたらいつでも」「好きなときにいつでも」というような自由さではありません。「必要と認められた時に、いつでも」という意味を載せている辞典もありますが、「随時」という言葉は「気が向いたらいつでも」「好きなときにいつでも」という語感が大きな位置を占めているように思うのです。
 アベノマスクこそは「随時」に配付されたものでしょうが、美術館などは熟慮の末に決めているのでしょう。「状況は随時変わります」ではなく、「感染状況に応じて変更もありえます」と言うほうが望ましいと思います。

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