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2020年8月11日 (火)

ことばと生活と新聞と(172)

「んなあほな」という言葉


 前回は「んん」という言葉を取りあげましたが、その続きです。こんな記事がありました。関西の言葉では「そんな」という連体詞が「んな」となることがあるのです。
 記事の見出しは、〈んなアホな! / 「新婚さんいらっしやい!」のイス / こけて半世紀 / 文枝さん分身 転びやすいんやって〉となっています。

 尻の下にも半世紀--。桂文枝さん(76)といつも転がっている、あのイスの話やねん。ボケとツッコミの大阪魂が生きてんねんで。
 放送開始50年目を迎えたABCテレビの長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」。文枝さんの司会はスタート時からで、同一司会者によるテレビトーク番組の最長放送としてギネス世界記録を持つ。 …(中略)…
 いつか、イスのルーツを調べたいともくろんでいる。「身内の局ですが、『探偵!ナイトスクープ』は動いてくれるでしょうか」。んなあほな!
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年5月9日・夕刊、3版、7ページ、土井恵里奈)

 「んなあほな」は、「そんなアホな」の「そ」の発音が小さくなり、聞こえないような状態になったものです。その「んなあほな」という言葉については、以前の記事に取りあげられていたことがありました。

 この言葉の、独特の響きを耳にしたときのことも忘れられない……、って、あれ? いつやっけ。大阪の寄席、天満天神繁昌亭で、五つのひらがなが並んでいるのをはっきり意識したのは間違いないんやけど。
 「んなあほな」
 見かけたのは上方落語協会の情報誌、そのタイトルなのだ。笑福亭仁鶴さんの弟子、笑福亭仁勇さん(56)の案だったそう。「『ん』で始まるから、目立つと思ったんですよ」と命名者は明かす。
 「いきなり『あほな』はキツいけど、前に『んな』って付けると、ノリツッコミのようになるんじゃないかなあ。『そんなあほな』の『そ』がかすれたんでしょうね」。関西のツッコミ文化の一翼を担う言葉だ。 …(中略)…
 そもそも「ん」で始まる日本語って、ほかにあるのか? 広辞苑に「ん」の欄はささやかにあった。「ンジャメナ」「んす」「んず」「んとす」。なんのこっちゃ。「んなあほな」の方がはるかにポピュラーな気がするけどなあ。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2015年5月27日・夕刊、3版、2ページ、「またまた勝手に関西遺産」、篠塚健一)

この記事では、〈「いきなり『あほな』はキツい〉と書かれていますが、いきなり「あほな」と言われても、関西人には厳しく響かない場合があると思います。そして、〈前に『んな』って付けると、ノリツッコミのようになる〉ということは関西人にはよくわかる感情だと思います。
 「あほ」または「あほう」という言葉については、国語辞典には、知能が劣っているとか、愚かなことという意味が書かれているだけですが、関西人はそれだけの意味とは考えていません。参考までに、私が『明石日常生活語辞典』に書いている説明を引用しておきます。

あほう〔あほー、あほ〕【阿呆】《名詞、形容動詞や(ナ・ノ)》 ①ぼんやりしていて、頼りないところがあること。鋭さに欠けたり手抜かりが生じたりすること。また、そのような人。「あほな・ こと・を・ し・て・ そん(損)・を・ し・た。」②機能や働きが失われること。効き目がないこと。「この・ じょーまえ(錠前)・は・ あほ・に・ なっ・とる・さかい・ つこ(使)ー・たら・ あか・ん・よ。」③程度が甚だしい様子。「あほな・ほど・ よー・ つ(釣)れる。」〔⇒ばか【馬鹿】。①②⇒あっぽ【阿っ呆】、だぼ。①⇒ぬけ【抜け】、まぬけ【間抜け】、ぼけ【呆け】、ぬけさく【抜け作】、あほうたれ【阿呆垂れ】、あほうだら【阿呆垂ら】、あほんだら【(阿呆垂ら)】、あほんだれ【(阿呆垂れ)】、だぼさく【だぼ作】、ぼけさく【呆け作】、ぼけなす【呆けなす】、とぼけさく【惚け作】、ばかもん【馬鹿者】、ばかたれ【馬鹿垂れ】〕

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