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2020年9月 7日 (月)

ことばと生活と新聞と(199)

「いなす」とは、逃げたり活用したりすることではない


 「災害『いなす』防災へ」という見出しのついた、小さな記事がありました。全文を引用します。

 地球温暖化に伴うとみられる気象災害が世界各国で起こっており、環境省と内閣府は、気候変動のリスクをふまえた防災・減災の戦略をまとめた。ダムや堤防などのハード対策の強化よりも「危ない土地には住まない」「自然の機能を活用する」など「災害をいなす防災」を重視する。30日、小泉進次郎環境相、武田良太防災担当相の共同メッセージとして発表した。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年7月1日・朝刊、14版、4ページ)

 「いなす」には「去なす」とか「往なす」という文字が使われるように、帰らせる、去るようにさせるという意味です。相撲では、身をかわして相手の体勢を崩すという意味で使われています。一般に使われるのは、攻撃や追及を軽くあしらうという意味です。
 共同メッセージにはいろいろなことが述べられているのかもしれませんが、この記事に挙げられている「危ない土地には住まない」というのは、逃げる(敬遠する)ということですから、災害を「軽くあしらった」ことにはなりません。あしらう前に、逃げを打っているのです。
 「自然の機能を活用する」というのは具体的にどういうことをするのか述べられていませんから、具体性に乏しいのですが、活用することは「いなす」ことにはならないと思います。正面から対応することは、「いなす」ことにはならないのです。
 災害を「いなす」という言葉遣いは、災害にうまく対応して(上手に身をかわして)、その災害を少なくする(軽くあしらう)ということでしょう。
 逃げる一方であったり、対応策を作って活用したりすることは、「いなす」という言葉にあてはまらない内容であると思います。
 もとより防災を目指した対応策は必要ですから、しっかりした政策を実施してほしいと思います。けれども、言葉は正しく使ってほしいと思います。新しい使い方の言葉を提示することよりも、正しい言葉遣いで、わかりやすく語ってほしいと思うのです。

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