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2020年9月23日 (水)

ことばと生活と新聞と(215)

「政権」という言葉の頻用


 安倍首相から菅首相に移りました。とはいえ、「アベノミクス」「アベノマスク」になぞらえて「アベノマ(ン)マ」などという言葉もささやかれているようです。政権交代のような大きな出来事も、言葉の遊びに堕しているようです。
 それというのも前首相が、言葉を正確に、重々しく使ってこなかったことに由来しているのかもしれません。言葉が宣伝材料になってしまっていたと言ってもよいのかもしれません。
 前首相の時代に気になったことの一つは、「安倍政権」という言葉を自分の口からしばしば述べていたことです。しばしばではなくて、しょっちゅうと言うべきかもしれません。
 政権とは、国の政治を行う権利のことです。内閣などは、国の政治を行う権利を持っているのか、国の政治を行う義務を果たさなければならないのか、考え方はいろいろあってもよいと思います。政権という言葉があるのですから、それを権利と考えることがあってもよいのでしょう。
 けれども、政権という言葉を使うのはどんな人でしょうか。これまでは、首相の位置にある人が、自分は政権を握っているなどと言うことは少なかったように思います。一般の人や報道機関などが、政権という言葉を使ってきたように思います。
 前首相は、ことあるごとに政権という言葉を使い、しかも自分たちのことを「安倍政権」という言葉で表現してきました。そして、経済政策に自分の名を冠して「アベノミクス」とも称してきました。まったくコマーシャル・メッセージのごとく扱って、自分を崇め奉るように表現してきたように思います。
 政治家は議論をする場合に、相手のことを悪く言ったりすることがあります。仕方のないことでしょう。けれども、議論をする前に自分たちのことを優れた存在であるがごとくに飾ったり、権威づけたりすることはやめてほしいと思います。
 新しい首相が、自分たちのことを政権呼ばわりすることは、多分ないだろうと思います。「安倍政権」とか「アベノミクス」とかに類する言葉は、政権内部から発する言葉ではありません。この8年ほどの期間の特異現象として、将来は忘れ去られるべき言葉であると思うのです。

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