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2020年9月20日 (日)

ことばと生活と新聞と(212)

「ジャンヌ」と「ラリー」の、国語辞典の扱い方


 日本航空のジャンボ機墜落事故から35年を迎えたというニュースに、こんな記事と見出しがありました。

 宝塚歌劇団出身の俳優だった長女由美子さん(当時24)を亡くした吉田公子さん(86)=東京都大田区=は、尾根の墓標を毎年訪れていたが今年はかなわなかった。それでも「少しでも娘の近くにいたい」と、ふもとの村までやってきた。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年8月12日・夕刊、3版、1ページ)

 この記事の見出しは「ジェンヌだった娘 悼む」となっています。「ジェンヌ」というのは「宝塚歌劇団出身の俳優」、つまり元・タカラジェンヌです。「ジェンヌ」という言葉はどんな言葉とも結びつくわけではないと思いますが、パリジェンヌなどはよく聞きます。
 ところで「ジェンヌ」だけの説明は、国語辞典でどのように書いているでしょうか。驚くことに、『広辞苑・第4版』、『岩波国語辞典・第3版』、『現代国語例解辞典・第2版』、『明鏡国語辞典』、『三省堂国語辞典・第5版』、『新明解国語辞典・第4版』、『旺文社国語辞典・改訂新版』には、項目が見当たりませんでした。

 別の言葉に移ります。こんな記事がありました。

広島市佐伯区内の店舗を利用しカードにスタンプを集めれば割引券として利用できる「まちの魅力応援スタンプラリー」が、始まっている。
 (西広島タイムス、2020年7月24日発行、12ページ)

 この記事の見出しは「スタンプ集め12店舗応援 / ラリーして割引券に活用 / 広島市佐伯区で」となっています。本文の「スタンプラリー」を短く「ラリー」と言っています。
ところで「ラリー」だけの説明を、国語辞典ではどのように書いているでしょうか。例えば、『三省堂国語辞典・第5版』は次のように説明しています。

 ①〔卓球・テニス・バレーボールなどの〕ボールの打ちあい。
 ②〔自動車の〕耐久競走大会。

 上記の新聞の言葉遣いは、②の意味を比喩的に拡大したものでしょう。けれども、スタンプラリーなどという行事は盛んに行われており、それを短く「ラリー」と言うこともしばしば目にします。拡大した意味も、きちんと国語辞典に書くべきでしょう。
 『広辞苑・第4版』だけは、上の①②に加えて、「(共通の関心による)大衆集会」という意味を書いていますが、『岩波国語辞典・第3版』、『現代国語例解辞典・第2版』、『明鏡国語辞典』、『新明解国語辞典・第4版』、『旺文社国語辞典・改訂新版』はいずれも、『三省堂国語辞典・第5版』と同じような2項目の説明です。
 国語辞典は、ひとつひとつに個性があるようには思いますが、大同小異であって、役に立たない項目(言葉)の説明もあるのです。
 国語辞典編集部には、このような声が届かないのでしょうか。あるいは、直接に編集部に声を届けなくても、人々の声や反応などを汲み取る仕組みができていないということなのでしょうか。
 私はこれまでにも、国語辞典の記述内容について、ブログにたくさんの文章を書き続けてきました。たぶん見ていただけていないように思います。

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