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2020年9月16日 (水)

ことばと生活と新聞と(208)

文字を見たら納得できる「線状降水帯」


 気象情報で嬉しいことは、おかしなカタカナ語を使わないで、日本語で表現しようとしていることです。それが新しい言葉遣いであっても、よくわかるように工夫されていると思います。新型コロナウイルスの感染に関わるニュースにはカタカナ語が氾濫していますが、気象情報は日本語を工夫して使っているように思います。
 「センジョウコウスイタイ?」という見出しの記事がありました。引用します。

 ある朝、まだ寝床にいたときのことだ。テレビのニュース番組から、「センジョウコウスイタイが発生するおそれがある」と警戒を呼びかける声が耳に入ってきた。
 画面の情報なしに、もうろうとした状態でまず思い浮かべたのは「戦場」だった。取材で「線状降水帯」を見聞きしていたにもかかわらず、頭がついていかなかった。洗浄、船上、扇状、扇情……考えてみれば、同音異義語はたくさんある。普段は使わない単語が二つ並び、線なのに帯なのもわかりにくい。
 備えを促すのに、この言葉をあえて使う必要があるだろうか。「激しい雨が続いて災害になるおそれ」ではだめなのか。 …(中略)…
 自戒を込めていえば、メディアは目新しい言葉、目を引く言葉に飛びつきやすい習性がある。それにしても最近、災害のたびにこうした専門用語があふれすぎてはいないか。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年8月20日・夕刊、3版、5ページ、「e潮流」、佐々木英輔)

 線状降水帯というのは新しい言葉です。昔は線状降水帯がなかったわけではありませんが、この言葉で説明しようとしているのは最近のことであるようです。説明が詳しくなっていくのに伴って、使う言葉が増えるのはしかたがないことです。「線状降水帯」を「激しい雨が続いて災害になるおそれ」と表現すると、言っている内容が異なったものになってしまいます。
 筆者の言う「自戒を込めていえば、メディアは目新しい言葉、目を引く言葉に飛びつきやすい習性がある」は、まったくその通りだと思います。目新しい言葉、目を引く言葉ではなく、従来からの日本語に工夫を凝らした表現を心がけてほしいと思います。
 ところで、どんな言葉であっても、初めて見聞きしたときには違和感を覚えたり、理解が行き届かなかったりするものです。日本の言葉であっても外来語であっても同じです。けれども「線状降水帯」という文字遣いは印象に残って、わかりやすく伝わってきます。円周のように広がるものではなく直線状に広がって、、しかも何㎞も帯状に連なっているということが理解できます。
 カタカナを連ねた言葉の場合は、その言葉の由来や、意味している内容などがわからないことが多いのですが、漢字が並んでいる場合は意味(言葉の使い方)がわかります。
 カタカナ外来語のままで使うのは、日本語で表現しようという努力を放棄していることに他なりません。新しい内容や概念などを表す言葉を、カタカナ外来語を離れて作り出すことも試みてほしいと思います。気象情報などに、カタカナ外来語が少ないというのは喜ばしいことです。やってできないことはない、ということの見本のように思われます。

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