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2020年9月13日 (日)

ことばと生活と新聞と(205)

言葉の取り合わせ


 「饂飩蕎麦」というものを食べたことはありますか。「カレーライスハヤシライス」はどんな味でしょうか。「コーヒー紅茶」を味わったことはありますか。--こんなことも言ってみたくなります。
 これは2行書きのメニューをつないで書いたものです。それは、こんな文章を読んだからです。

 飲食店のシャッターです。〈とんかつコーヒー〉の文字を思わず凝視しました。一体どんなコーヒーだろう。まさか豚カツ入りの?
 こう言うと、「それは、豚カツとコーヒーだろう」と笑われるかもしれません。それはそうです。ちゃんと2行に分けて書いてあります。
 私は「ウインナコーヒー」を連想したのです。子どもの頃、ウインナーソーセージ入りのコーヒーがあると思っていました。それなら、豚カツ入りがあっても……と、頭に一瞬よぎったわけです。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年6月6日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 この文章はずいぶん個人の感覚に基づいたものです。2行書きのものをひとまりに続けて解釈するなどということをすれば、言葉の取り合わせはいくらでも広がります。飲食店のお品書きからは、いくらでもおかしな組み合わせを取り出すことができるでしょう。
 「とんかつコーヒー」でなくて、「コーヒーとんかつ」と書かれていれば、コーヒー味の豚カツを思い浮かべるのでしょうか。言葉のルールなどを無視した解釈は、いくらでも可能なのです。
 「いちご大福」や「カレーパン」になると、イメージが定まっています。けれども、そういう言葉も、初めは、どんなものか分からなかった人がいたかもしれません。熟した意味を持つようになった言葉は価値がありますが、言葉をもてあそぶような解釈はすべきではありません。とりわけ国語辞典編纂者がこういう文章を書くことは避けてほしいと思います。

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