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2020年9月30日 (水)

ことばと生活と新聞と(222)

校閲の欠如した新聞社


 同じことを表現するにしても、言葉遣いが多様である方が奥行きの深い文章に見えることがあります。とは言え、それは文学的な色合いを持った文章のことであって、新聞記事にあてはまるかどうかはわかりません。
 スポーツ飲料という言葉、スポーツドリンクという言葉、スポドリという言葉は、同じものを表す言葉のようですが、この3つの言葉が入り乱れて現れる文章を読むと、文章の校閲が行われているのだろうかという疑問を感じます。
 夕刊の1面の半分以上を占める記事から引用します。

 厚生労働省は7月8日、食品安全情報の公式ツイッターで「金属製の容器(ヤカンや水筒)は酸性の飲み物と反応し、金属が溶け出すことがあります。金属製の容器にジュースやスポーツ飲料を入れる時は、注意書きをよく確認しましょう!」と発信した。
 担当者は「容器の中に傷やサビがあるとスポドリなどによって金属が溶け出す可能性がある。長時間の保管は避けてほしい」という。 …(中略)…
 象印マホービン(大阪市)の広報担当者は、「スポーツドリンク対応の商品を使用してほしい」と話す。 …(中略)…
 タイガー魔法瓶(大阪府門真市)の広報担当者は、ステンレス製の水筒の内側にはフッ素を使用していないが、表面の凹凸をできるだけなくした「スーパークリーン加工」がされているため、「ステンレスが腐食しづらく、スポーツ飲料を入れても基本的に問題ない」とする。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年8月28日・夕刊、3版、1ページ、小川裕介)

 この記事全体で使われている言葉は、「スポーツ飲料」が5回、「スポーツドリンク」が2回、「スポドリ」が9回です。文字数の少ない「スポドリ」を多用したいという意図は明確に現れていますが、どうして3種類もの言葉を使う必要があるのでしょうか。
 この記事の一番大きな見出しは、〈水筒にスポーツ飲料 NG?〉となっています。また、記事に添えられた写真の説明文には「スポーツ飲料を水筒に入れても大丈夫なのだろうか」とあります。基本的な言葉は「スポーツ飲料」だと心得ていながら、「スポドリ」という風情のない言葉を多用しているのです。すべての個所を「スポーツ飲料」と書いても、文字数はそんなに増えるはずはありません。
 実は、この記事の冒頭に、「厳しい暑さが続く中、熱中症予防にスポーツドリンク(スポドリ)を水筒に入れて持ち歩く人もいる。」と書かれています。少し長い言葉を短縮して使うのは、新聞記者の習性のようです。
 一般の文章の場合は、「スポーツドリンク(以下、スポドリと書く)」というような記述になりますが、新聞は実に粗っぽい記述をしています。短縮して当然だと言わんばかりの書き方です。
 私は、新聞の短縮語表現が日本語の美しさを壊す、大きな力になっているということを、実例に基づいて書き続けてきました。新聞記者には、読者に伝わればそれでよい、日本語の美しさなどには拘泥しないという考えの持ち主が大多数を占めているようです。
 このような指摘に対して、少しは考えてみようというような姿勢の人は、新聞社にはいないのでしょうか。実に情けないことです。
 私はブログの文章を朝日新聞社に送り続けていますが、私が書いたことに対して真剣な回答をいただいたことは皆無です。言葉を扱っている事業者として、言葉についての基本的な姿勢を、読者に向けてしっかりと示すべきであると思います。

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