« ことばと生活と新聞と(202) | トップページ | ことばと生活と新聞と(204) »

2020年9月11日 (金)

ことばと生活と新聞と(203)

学歴とは何か


 「あなたの〈学業に関する経歴〉を教えてください。」と言われたら、どのように答えるべきなのでしょうか。
 例えば「幼稚園から始まって小学校、中学校、高等学校を経て大学まで行きました。その他に、先生についてピアノを10年間教わりました。」というような答えが聞こえてくるようです。
 それに対して、「あなたの〈学歴〉を教えてください。」と言われたら、「大学まで行きました。」というような簡単な答えが聞こえてくるようです。あるいは、大学の固有名詞を言う人がいるかもしれません。
 実は、「学歴」という言葉を国語辞典で確かめると、次のようになっています。

『明鏡国語辞典』
 学業に関する経歴。
『現代国語例解辞典・第2版』
学業に関する経歴。
『広辞苑・第4版』
 学業に関する経歴。
『旺文社国語辞典・改訂新版』
 その人の学業に関する経歴。
『岩波国語辞典・第3版』
 学業についての経歴。

 これらの国語辞典の説明は、ちょうど履歴書に書く内容のことを言っているようですから、間違った説明ではありません。
 けれども、世間で使われる用例を考えると、そういう説明では足りないように思います。例えば「学歴が高い」というのは、最後に卒業した学校の段階のことを言っているようですし、「学歴を詐称する」というのは、卒業した学校の名前を偽った場合に使うように思います。
 新聞に、「『学歴なんて関係ない』本当でしょうか?」という見出しの記事がありました。その記事に、こんな文章がありました。

 私は、むしろ記者になってから「学歴」を意識させられています。卒業して十何年もたって「どこの大学?」「何学部?」と聞かれると、値踏みされているように感じることがあります。「学歴なんて関係ない」という言葉には、実態が伴っていない気がするのですが……。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月8日・朝刊、13版S、11ページ、「論の芽」、田中聡子)

 「学歴社会」とか「学歴偏重」という言葉には、最後に卒業したのが大学であるか否か、また、その卒業した大学が何大学であるのか、というところにまで及んでいるように思われます。そうすると、国語辞典の上記のような説明にはちょっと不満が残ります。別の国語辞典の説明を引用します。

『新明解国語辞典・第4版』
 その人が、どういう学校を卒業したかの経歴。
『三省堂国語辞典・第5版』
 ①(学校で)学問をおさめた経歴。②最後に卒業した学校の段階。

 この2つの国語辞典の説明にある、〈どういう学校〉〈最後に卒業した学校〉という表現が、高等学校や大学という校種であるとともに、学校の固有名詞をも含むという意味であるとすれば、現実に合っているということになるでしょう。
 もっとも「学歴社会」という言葉の中には、大学のランク付けを含むような意味もないとは言えないようなところが、引用した新聞記事には現れているような気がします。名実ともに「学歴なんて関係ない」という社会が到来してほしいと願わずにはおれませんが、それはいつになるのでしょうか。

|

« ことばと生活と新聞と(202) | トップページ | ことばと生活と新聞と(204) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ことばと生活と新聞と(202) | トップページ | ことばと生活と新聞と(204) »