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2020年10月28日 (水)

ことばと生活と新聞と(250)

インド太平洋ってどこのこと?


 菅首相の外遊報道などで、「自由で開かれたインド太平洋」構想という言葉をよく聞きます。インド太平洋という地名のくくりかたがよくわかりません。インドという国と太平洋という海洋とがなぜ結びついているのでしょうか。
 それを説明する記事がありました。こんなことが書かれています。

 コブク郎  最近、ニュースで「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という構想をよく聞くね。
A  日本が掲げる外交方針だよ。国際ルールを守ることや航行の自由といった価値観を共有する国々との連携を広げ、地域の繁栄と安定を進めるという考え方で、安倍晋三前首相が2016年に発表した。菅瀬政権も引き継いでいる。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月20日・朝刊、13版S、2ページ、「いちからわかる!」、北見英城)

 外交方針の内容はわかります。けれども、この記事の中には、インドという地名、太平洋という地名は書かれていませんから、なぜ「インド太平洋」構想と言うのかはまったく理解できません。「いちからわかる!」という記事の見出しとは裏腹に、出発点が理解できないのです。中身がきちんとわからなくてもよいから、〈不特定多数の人がインターネット経由で財源などの提供をおこなうこと〉を「CR」と覚えておけ、というのと同じことです。
 なぜ「インド太平洋」構想という名前なのかということは、過去の新聞で説明されていたのかもしれませんが、今となっては説明を読みたくても、載っていないようです。
 やむを得ず、インターネットに頼ることになります。外務省のホームページに、「自由で開かれたインド太平洋」という見出しがあります。そこには、こんな言葉が見えます。

 アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現することの重要性が、国際社会で広く共有されてきています。

 これを読んでも、冒頭に書いた疑問は解消できません。「インド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域」という言葉から判断すると、中東やアフリカまでの地域を「インド」と呼ぶということなのでしょうか。
 そもそも「インド太平洋」というのは、インド(国名)と太平洋(海洋名)とを合わせた言葉なのでしょうか。それともインド洋(海洋名)と太平洋(海洋名)とを合わせた言葉なのでしょうか。もし後者であるのなら「インド洋 太平洋」とすべきでしょう。「インド・太平洋」という書き方でも、誤解が生じ.かもしれません。インド洋と太平洋という2つの大きな海域をひとまとまりにできるのかという疑問もあります。
 「インド太平洋」というのは、中国の打ち出した「一帯一路」構想に対抗するもののようですから、政治戦略的な意味を持つ言葉なのでしょう。「GoToキャンペーン」というようなキャッチフレーズに過ぎなくて、「インド」がどこを指すのかというようなことは、どうでもよいことなのかもしれませんね。

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