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2020年10月17日 (土)

ことばと生活と新聞と(239)

「気持ちを切り替える」を、短く切り捨てた表現


 このブログ(223)回で「気持ちを切り替える」という言葉について書きましたが、その続きです。
 こんな表現が、同じ日に2つありました。

 前日は新人の森下(明大)が5失点。この日は大瀬良が8失点。先発の柱まで立て続けに崩れては、打線の援護にも限界はある。
 「切り替えてやる。それしかない」。試合後、佐々岡監督は言った。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月6日・朝刊、14版、11ページ、藤田絢子)

 次第にミスが増えた22歳は第2セットを奪われると、ラケットをコートに投げつけて大声を上げた。
 第3セット前、ベンチで頭からタオルをかぶった大坂。「できる限りの力を出して戦おう」と切り替えた。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月6日・朝刊、13版、15ページ、堤之剛)

 前の記事はプロ野球DeNA-広島戦のもの、後ろの記事はテニスの全米オープンのものです。短く「切り替える」と言っていますが、たぶん「気持ちを切り替える」ということでしょう。
 「切り替える」という言葉は、それまでの方法や制度などをやめて別のものにする、という意味です。
 前の記事では、これまでの戦い方(方法)をやめて新しいものにするという意味でしょうか。そんなことは簡単に行えるはずがありません。たぶん「気持ちを切り替える」という意味でしょう。
 後ろの記事では、「できる限りの力を出して戦おう」という表現を「切り替えた」と言い換えていますが、「切り替える」というのは、意志や意欲を述べるという意味と同じなのでしょうか。乱暴な表現です。
 それにしても、「気持ちを切り替える」という表現の「気持ちを」の部分を切り捨てて、単に「切り替える」という言葉だけで表現しようとするのはあまりにも乱暴です。新聞・放送などが乱暴に言葉を扱う状況がますます進んでいるように感じます。言葉の専門家であるべき新聞記者は、もっと言葉遣いに繊細であるべきでしょう。
 学校教育で新聞を取り上げてほしいと宣伝するのならば、新聞記事はもっとしっかりした言葉遣いをしなければなりません。NIEを話題にするときも、新聞社は記事内容のことばかり取りあげて、言葉遣いのことには逃げ腰であるように感じています。要するに言葉に対する自信がないのです。

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