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2020年10月25日 (日)

ことばと生活と新聞と(247)

「就職」と「入職」はどう違うのか


 保育園や幼稚園に入ることは「入園」、小学校から大学までの学校に入ることは「入学」と言います。入園式や入学式があります。〇〇スクールなどという名の専門学校があるとしても「入学」と言ってよいでしょう。
 就職して会社に入ることは「入社」ですが、官庁などに入ることは何と言うでしょうか。「入庁」とか「入省」という言葉を見かけることがありますが、広く使われているのでもないでしょう。では、社会福祉協議会に就職するのはどう言うのでしょうか。「入会」という言葉は別の意味で使われることが多いのですから、使うことは避けているでしょう。
 そのような立場の人を紹介する記事がありました。

 大阪府豊中市生まれ。1987年、豊中市社協に入職。全国初のコミュニティソーシャルワーカーに。NHKドラマ「サイレント・プア」のモデルになり、監修を務めた。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月17日・夕刊、3版、3ページ、「いま聞くinterview」)

 「にゅうしょく」という発音を聞いて思い浮かべる文字は「入植」です。朗読したら(あるいは、放送の原稿であるのなら)、「入職」という言葉はふさわしくありません。
 国語辞典で「入職」を見出しにしているのは少ないのですが、『三省堂国語辞典・第5版』は「入職」を次のように説明しています。

 その職業について、職場ではたらくこと。( ←→離職)

 この説明に従えば、どんなところへ就職しても、それは「入職」と言えそうですが、会社に入ることを「就職」とは言っても「入職」と言うことは見かけません。「入社」などという言葉を使いにくい団体などの場合に限って「入職」と言うのでしょうか。
 「入職」の対になる言葉は「離職」でしょうか。対を考えるならば、入園⇔卒園、入学⇔卒業、入社⇔退社(または退職)、就職⇔退職、でしょう。入職⇔退職、という対になるのではないでしょうか。
 『三省堂国語辞典・第5版』が、入職⇔離職という対を設けていることから判断すると、「入職」とは、短期間の、仮の職業であって、離職の可能性もあるような危うさを感じてしまいます。
 現実の「入職」が、この新聞記事以外で、どのような場合に使われているのかは知りません。けれども、こういう場合に、何が何でも漢字2字の言葉を使わなければならないわけはないでしょう。「1987年、豊中市社協にはいる。」でよいでしょう。その団体が、新たに就職した人を集めて行う式が、入社式であっても入会式であっても辞令交付式であってもかまわないと思います。
 同じ日本語であっても、新聞は漢語(熟語)を使って表現する傾向が強いと思いますが、和語もどんどん使えばよいのです。おかしな言葉を作り出すよりも、和語を駆使して表現すればよいのです。

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