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2020年10月14日 (水)

ことばと生活と新聞と(236)

略称とは何か


 印刷物に誤りがあって、訂正が起こるのは当然のことと言ってよいでしょう。誤りをゼロにすることは無理でしょう。しかし、新聞に大企業や有名人に関わる訂正記事が出ることがよくありますが、小企業や無名の人の場合は訂正は無視されています。小さなもの、弱いものを軽んじるのは、政府と同じような姿勢であると思います。
 さて、訂正記事のひとつに、こんなのがありました。

 3日付金融情報面「経済気象台 信託銀行の大罪」の記事で、「三井信託」とあるのは「三井住友信託」の誤りでした。略称を誤って入力しました。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月6日・朝刊、14版、24ページ、「訂正して、おわびします」)

 2つの文で書かれているのですが、前の文に問題はありません。後ろの文は新聞社の独断のように思えます。
 昔、中央信託銀行と三井信託銀行が合併して中央三井信託銀行となりました。その中央三井信託銀行と住友信託銀行とが合併して三井住友信託銀行となりました。三井信託銀行はかなり以前に消滅した社名です。
 訂正記事の2文目は、「略称を誤って入力しました。」と書かれていますが、「三井住友信託」の略称が「三井信託」であるというのは、社会で広く認められていることなのでしょうか。あるいは金融業界での略称なのでしょうか。
 もしかして、「三井信託」が「三井住友信託」の略称であるというのは新聞社の内部だけでの扱いであるかもしれないように思います。
 新聞の紙面は略称だらけです。平気な顔をして「三住信」などという文字を使いかねないのが新聞です。三井も住友も同等に扱うはずの新聞が、三井住友信託の略称を三井信託とすることなどはありえないと思います。
 上の訂正記事は、「略称」の問題ではなく、「昔の社名」を誤って入力したと書くのが正しいのでしょう。「三井信託」銀行は厳然と存在した社名であって、略称ではありません。
 略称は、社内の便宜のために使うものではなく、社会で広く認められているものであるはずです。

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