« ことばと生活と新聞と(228) | トップページ | ことばと生活と新聞と(230) »

2020年10月 7日 (水)

ことばと生活と新聞と(229)

仮名書きの固有名詞


 不思議な名称についての記事がありました。

 「府立」なのに「いちりつ」。そんな名称の高校が登場することになった。大阪府教育庁は31日、同府枚方市にある「大阪市立高校」の校名を、「府立いちりつ高校」に変更することに決めた。2022年度、同校を含めて21ある大阪市立の高校の運営が、府に移管されるのに合わせて変更する。 …(中略)…
 同校は1941年、大阪市立初の旧制中学校として同市内に開校した。43年に現在地へ移転。48年の学制改革の際は、「枚方高校」「第一高校」などの案も出たが、大阪市が現在の校名に決めた。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月1日・朝刊、14版、28ページ、山田健悟)

 大阪市立の高校が隣接する市にあるというのも珍しいことですが、21もある大阪市立の高校の中で、この学校が正式名称として「大阪市立高校」と名乗っているのも珍しいことです。けれども70年を超える歴史があり、市立高校の略称で親しまれてきているのでしょう。略称が残ることは喜ばしいことでしょうが、「府立いちりつ高校」の名称に違和感を持つ人も多いことでしょう。「いちりつ」という用字によって「市立」という意味が消えるわけではありません。
 固有名詞を仮名書きにすることが広く行われています。よほど読みにくい場合は別ですが、赤とんぼの歌で知られた兵庫県龍野市が「たつの市」に改称されて、何年かたちました。いまだに改称の理由が理解できません。
 兵庫県内には「南あわじ市」があります。この市は、南淡町、三原町などの合併によって誕生しましたが、南淡路市とすれば、南淡町を継承した名前のように見えるかもしれません。「南あわじ市」とした理由の一端が、そんなところにあるのかもしれません。けれども「たつの市」とした理由は思い当たりません。龍野(竜野)という文字がかもし出す雰囲気は、仮名書きには現れていません。元の漢字に戻すという運動などは生まれ出ないのでしょうか。
 「府立いちりつ高校」は苦肉の策のようですが、仮名書きに逃げ込んだという印象はぬぐい去れません。略称の「市立高校」はいつまでも続いてよいのでしょうが、言葉の意味を壊すような使い方(正式名称)はやめるべきだと思うのです。
 大阪都構想の賛否を問う住民投票が近づいていますが、高校名は早々と決めてしまったようです。

|

« ことばと生活と新聞と(228) | トップページ | ことばと生活と新聞と(230) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ことばと生活と新聞と(228) | トップページ | ことばと生活と新聞と(230) »