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2020年10月18日 (日)

ことばと生活と新聞と(240)

新聞の見出しの働き


 一部のコラムを除いて、たいていの新聞記事には見出しが付きます。なぜ見出しが付けられるのかと言えば、記事内容を手短く示して、読者が記事を読むように誘い込むことです。わかりやすい表現が求められます。
 見出しは文字数に制約があります。けれども、いい加減な略し方をしたり、読者を迷わせる表現をしてはいけません。
 意外に文字数をたくさん使っている見出しに、こんな表現がありました。

 マイクロプラ 家事でも出ます
 洗濯で合成繊維くず・食器洗いでスポンジのカス…
 天然素材を選ぶなど 見直しや工夫を
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月3日・夕刊、3版、5ページ、見出し)

 こんなに多くの文字数を使えるのに、どうして「マイクロプラ」などという言葉を使わなければならないのでしょうか。
 本文には「マイクロプラスチック」という言葉が12回も使われています。それを略称で呼ぶという書き方はされていません。3枚の写真があって、そのうち2枚の説明文にも「マイクロプラスチック」という表記がされています。記者が丁寧な(あたりまえの)言葉を使っているのに、見出しがぶち壊しの言葉を使っているのです。
 新聞は、文字数が制約されているから略語を使うという大義名分を振りかざしていますが、それは言い訳に過ぎません。記事がきちんと書かれていても、見出しがおかしな表現になっていると、記事の質も低下したような印象を受けることがあります。
 たぶん記者に向かっては、正しい日本語を使うように指導をしているのでしょうが、その上に立って記事を整理する立場の人がいい加減な姿勢であるのかもしれません。
 この記事の文章はきちんと書かれています。
 例えば、こんな書き方です。

 高田教授は「気づかないうちにマイクロプラスチックを出しているかもしれない。洗濯ネットの使用や天然素材を選ぶなど意識を変えれば減らせる」と話す。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月3日・夕刊、3版、5ページ、藤波優)

 ところがこのような表現を、荒っぽく、文末の「と話す。」の部分を切り捨てて、おかしな日本語にしてしまったり、「マイクロプラスチック」を略語に変えたりするのは、整理部記者なのです。そのうち「マイプラ」などというわけのわからない言葉が使われるようになるかもしれません。

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