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2020年11月19日 (木)

ことばと生活と新聞と(272)

飛び飛びの「縦断」


 例えばデパートの催し物である駅弁大会に、北海道から九州までの駅弁が並んでいても、それを全国縦断駅弁大会と言うことはないでしょう。全国からの品物を一カ所に集めたということなのですから。
 さて、新聞1ページを使った、こんな広告がありました。

 全国縦断お土産まつり
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月8日・朝刊、13版S、5ページ、全面広告)

 菓子類販売促進コンソーシアム(全国菓子工業組合連合会)が主催する展示直売会だそうです。たぶん全国各地のお菓子が並んでいるのでしょうが、「全国縦断」と言うからには、北から南までの各地で点々と開かれるのだろうと想像しましたが、会場は札幌・東京・新潟・名古屋・広島・福岡の6都市で、それぞれ1カ所のデパートが会場のようです。
 「縦断」という言葉は、細長いものの、長い方の端から端までを通り抜けることを意味しています。日本の地理で言うと、北から南までを通り抜けることです。桜前線や紅葉前線が日本列島を縦断して進むとか、映画を列島各地の映画館を縦断して公開するとか、そんな言い方をします。全国6カ所で開く展示即売会を「縦断」と言えるのでしょうか。例えば、美術展を全国3カ所の美術館で開催しても「縦断開催」とは言わないでしょう。
 数少ない場所で、飛び飛びに開くようなものを「縦断」と言うのは行き過ぎでしょう。テレビ局が少しだけ丁寧に取材した程度のものを「密着取材」だの「独占取材」だのと言うのに似ています。
 商業的には何でも大げさな言葉を使え、という考えが広がっていますが、人々はそんな言葉に踊らされることはないでしょう。奥ゆかしい言葉遣いの方が人々の心をとらえることが多いということを心得た方がよいでしょう。

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