« ことばと生活と新聞と(280) | トップページ | ことばと生活と新聞と(282) »

2020年11月28日 (土)

ことばと生活と新聞と(281)

打ち言葉の台頭


 言葉の活動を4つに分けると、話す、聞く、書く、読むです。もちろん、その4つの他に、自分ひとりだけで考えたり感じたりするときにも言葉を使っています。言葉は、考えるときに必須のものです。
 ところで、メールとかツイッターとかで使うのは話し言葉でしょうか、書き言葉でしょうか。どちらとも言えない、中間的なものだという意見もあると思います。ある人は、「話す」でも「書く」でもない、別物だと考えました。それを「打つ」と考えました。話すや書くから大きく離れていないけれども、新しい文体が使われているという考え方には同感をします。今では、打ち言葉が広がっているとも言えるようです。
 こんな記事がありました。

 肉まん、あんまん、ピザまんと多様な商品を取りそろえる井村屋(津市)。新たに商品化すべく進めているのが「具のない中華まん」だ。
 9月14日、井村屋のツイッターアカウントがこうつぶやいた。
 「秋冬の入り口になると思いだすのが、このツイート。もう6年前ですか…… やっぱり中華まんの具なしVer(つまりガワだけ)が欲しいいいいいい! オリジナル具材を用意し、楽しみたいいいいいいい! (開発部、このツイート見ていないかな……)」
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月21日・夕刊、3版、5ページ、「朝デジから」、若松真平)

 言葉は、考えや感情などを他人に伝える役割を果たします。手紙のような個人宛のものと違って、ブログやツイッターなどは不特定多数を相手にしています。個人宛のものは人間関係に基づいて、くだけた表現もあり得ます。けれどもブログやツイッターなどにも既知の人宛の言葉と同様な表現が使われ、しかも、発音を重視したような書き言葉となっています。特別な文体です。自分の名前などを明確に示さない発信人ですから、表現の自由度が高まっているのです。
 例えば「い」という文字をいくつも続けて表現することは、その個数に制約がなく、勝手気ままに連ねることもあります。「!」の符号などをやたらたくさん並べているのを見ると、読む側は気分が悪くなることがあります。
 打ち言葉は、勝手気ままな要素を多分に含んでいるのです。
 それを書き言葉が真似てよいとは思いませんが、真似る傾向が広がりつつあるようにも思います。例えば、この記事の見出しは、〈具なし中華まん「すまん!!」 / 井村屋つぶやき 商品化検討〉となっています。具のない中華まんを社内では「すまん」と呼んで商品化をめざしているようです。「すまん」という名前を、記事の見出しは「すまん!!」と書いているのです。商品名(となるかもしれない名称)に勝手に「!!」を加えているのです。新聞記者も「打ち言葉」を身に付け始めているようです。

|

« ことばと生活と新聞と(280) | トップページ | ことばと生活と新聞と(282) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ことばと生活と新聞と(280) | トップページ | ことばと生活と新聞と(282) »