« ことばと生活と新聞と(259) | トップページ | ことばと生活と新聞と(261) »

2020年11月 7日 (土)

ことばと生活と新聞と(260)

成り行きまかせの「言葉の変化」


 前回の続きです。文化庁の国語世論調査の結果は、年に1回の話題として、新聞は取りあげます。気になるのは、新聞はどのような姿勢でこの話題を報道しているのかということです。1面の報道と同じ日に、社会面にも記事が載りましたが、その見出しは次のようになっていました。

 〇〇活 〇〇ハラ 「使う」5割超 / 「ガン見」のガンは… 「気になる」4割
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月26日・朝刊、14版、38ページ、見出し)

 数値が最大の関心事であるようです。そして、その数字で、新しい表現も、誤用である言葉遣いも、肯定的にとらえようとする姿勢です。記事の文章を引用します。

 文化庁が25日に発表した「国語に関する世論調査」は、近年よく聞かれる「〇〇活」、「〇〇ハラ」という新しい表現についても調べている。いずれも5割以上の人が「自分は使う」としており、浸透していることが明らかになった。 …(中略)…
 「手をこまねく」「敷居が高い」については、本来の意味を選ぶ人が2008年度の調査より減った。
 文化庁国語課の担当者は「この調査は政策に生かすだけでなく、年に1度、家庭などで言葉について考えたり話したりしてもらう機会になることも意識している。コミュニケーションをうまく進めるためにも言葉が変化している状況を認識してもらえれば」と話す。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月26日・朝刊、14版、38ページ、丸山ひかり)

 記者は、%で表される調査結果の数字に大きな関心を持っているようです。そして、言葉の略し方や、意味・用法の誤用などについても、数値が高くなればそれを認めようという姿勢で記事が書かれているように思われます。社会に浸透すれば、誤用であれ望ましくない使い方であれ、それを認めようという考えならば、新聞のリーダーシップなどは消え失せてしまいます。そういう考えであるのなら、世論調査などは不必要であり、言葉の変化はなるがままに任せておけばよいのです。
「〇〇活」、「〇〇ハラ」という表現を5割以上の人が「自分は使う」と言っているにしても、それは自分でそんな言葉を作って使っているのではありません。新聞などがやたら「〇〇活」、「〇〇ハラ」などを使っているのが伝染したのです。みなもとは報道機関です。こんな表現を広げたのは新聞社などであることには、目をつぶった報道姿勢です。他人事のような報道です。
 文化庁国語課の担当者のコメントとして書かれている「この調査は政策に生かすだけでなく」という言葉の意味がわかりません。世論調査が国語政策にどのように生かされたのか、そんな報道は見た記憶がありません。調査が政策にどう生かされたのかについては、きちんと取材して記事を書いてほしいと思います。
 記事を書く際にコメントを聞いたのが、国語辞典編纂者の飯間浩明さんというのは気になります。自社の紙面に連載記事を書いている人に、意見を聞いて、それを記事に散りばめるというのは、あまりにも手軽な取材姿勢です。毎週の連載記事を読めば、この人の国語に対する考えは自明です。連載の気軽な文章が気になっています。もっともっとさまざまな人の意見に耳を傾けるべきです。

|

« ことばと生活と新聞と(259) | トップページ | ことばと生活と新聞と(261) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ことばと生活と新聞と(259) | トップページ | ことばと生活と新聞と(261) »