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2020年11月 8日 (日)

ことばと生活と新聞と(261)

国語を「乱しほ」にしてはいけない


 ごくわずかの例をもとにして、まるでそれが社会全体の流れであるかのような紹介の仕方をし続けている連載記事があります。それが毎週のように繰り返されています。これも、その一つです。

 もんじゃ焼きの店の立て看板。〈「飲みほ」単品 ¥1,800〉とあります。「飲み放題」のことですね。「放題」を「ほ」と略すようになったのは、わりあい最近です。 …(中略)…
 「飲みほ」や「食べほ」(=食べ放題)は、今世紀になって広まった言い方です。 …(中略)…
 現在、「放題」を「ほ」と略す例としては、ほかに「総菜取りほ」「クッキー詰めほ」などがあります。飲食関係で多いですね。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月12日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 「飲みほ」や「食べほ」が広まったとしても、それは街角での言い方に過ぎません。商売上の、客寄せ言葉のようです。しかも、全国の人々に広まっているとは思われません。記事の見出しには、「仮名1文字で特別の意味」と書いてありますが、「ほ」1文字では意味を持ちません。「飲み」「食べ」「取り」「詰め」など、人間の欲望を表すような動詞と結びついて意味が生じてくる、醜い使い方なのです。
 「街のB級言葉図鑑」の連載をはじめ、この筆者が書いている文章には、その現象が望ましいか否かの判断基準がありません。自分が見つけたから、人々に言いふらしてやろうという気持ちしか感じられません。
 国語辞典編纂者として言葉のありのままの姿を見つめることは大切なことです。けれども、世の中に定着していない言葉を、あちらこちらの連載や本に書き散らし続けていくのは望ましいことではありません。
 かつて見坊豪紀さんが精魂込めて集められた言葉のコレクションとは、性格が異なります。「街のB級言葉図鑑」はちょっと見かけたら、それを話題にして好き勝手なことを書き綴っています。国語の乱れをますます拡散させようとするような書き方です。
 この人の文章は、まるで国語を「乱しほ」にしているとしか言いようがありません。

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