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2020年11月13日 (金)

ことばと生活と新聞と(266)

カギカッコの頻出する文章


 小さな子どもが書いた文章には、強調するためのカギカッコが多用されることがありますが、そんな文章は大人の書いたものにはありません。
 ところが、新聞記者の書いた文章にそれが現れたので、驚きました。17文字×52行の文章の中にこんなにしばしば使われていました。会話の引用のような部分を省いても、こんなにカギカッコが使われていました。部分部分を引用しますから、全体の文脈は取りにくいかもしれません。けれども、今回はカギカッコの使い方を話題にしていますから、その点は了解してください。

 首相の一挙手一投足を追う「総理番」として、7年8カ月余り続いた安倍政権の終わりを間近で取材した。 …(中略)…
 明らかな「おかしさ」を確信したのは、8月12日午後。広島への原爆投下後に降った「黒い雨」をめぐる訴訟で政府が控訴し、その理由を「ぶら下がり」で尋ねた時だった。 …(中略)…
 それまでもたびたびあった「はぐらかし」とは違い、質疑がまったくかみ合っていなかった。 …(中略)…
 取材メモには「2秒沈黙」など細かな状況を加えた。 …(中略)…
 森友・加計学園の問題などで政権批判にさらされた局面を、衆院解散とその後の総選挙の勝利で変えようとした2017年のように、内閣改造など何らかの手で「リセット」してくると考えていた。「まさか」を痛感した。
 安倍政権には功罪ともに多くの「遺産」がある。 …(中略)…
 安倍政権を「継承」した菅義偉首相は就任後、昼夜休日を問わず、精力的に動き回る。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月7日・夕刊、3版、6ページ、「取材考記」、楢崎貴司)

 上記の引用で、カギカッコを施すのが普通であると思われるのは「黒い雨」ぐらいでしょう。この文章には取材用語なども多用されていますが、業界用語を避けて一般的な書き方をしようというような姿勢が見られません。「総理番」「ぶら下がり」「2秒沈黙」などという言葉を平気で使っています。
 「おかしさ」「はぐらかし」「リセット」「まさか」「遺産」「継承」にカギカッコを付ける理由は理解できません。こんな文章を経験を積んだ記者が書くとは思えません。きっと年若い人が書いたのでしょう。ある特定の言葉や特定の部分を強調して述べたいときには、表現の仕方を工夫すればよいのです。カギカッコなどは子どもじみています。
 こういう文章は、朗読した場合、カギカッコの存在は感じられません。新聞の文章が朗読に適しないというのは大きな欠陥です。文章は目で読むためだけにあるのではありません。

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