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2020年11月 6日 (金)

ことばと生活と新聞と(259)

「乱れてなくない」という言葉こそ乱れている


 2019年度の「国語に関する世論調査」の結果が発表されました。それを報じる記事の見出しを引用します。

 国語 乱れてなくない? / 乱れ感じない人 20年前より20ポイント増 文化庁調査 / SNS普及 多様な表現影響か
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月26日・朝刊、14版、1ページ、見出し)

 記事から引用します。

 「ふだんの生活の中で接している言葉から考えて、今の国語は乱れていると思いますか。それとも乱れていないと思いますか」との質問に、「非常に乱れていると思う」と「ある程度乱れていると思う」を選んだ人は計66.1%。乱れていると思う点を複数回答で聞くと、「敬語の使い方」と「若者言葉」がそれぞれ6割を超え、「新語・流行語の多用」「挨拶言葉」がそれぞれ3割を超えた。 …(中略)…
 文化庁は1995年度から毎年、調査を実施。この質問は99年度調査から5度聞いており、「乱れている」は99年度から約20ポイント減り、「乱れていない」も約20ポイント増えた。同庁国語課は「スマートフォンやSNSの普及で人々が文章を発信する機会が増え、多様な表現に触れやすくなった。辞書などで本来の意味とされるものと違うと思っても寛容に受け止める人が増えつつあるのでは」とみる。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年9月26日・朝刊、14版、1ページ、丸山ひかり)

 文化庁国語課のコメントのうち、「辞書などで本来の意味とされるものと違うと思っても寛容に受け止める人が増えつつある」ということに注目したいと思います。「本来の意味とされるものと違う」ものとは、自分が書く言葉ではなく、他人が書いた言葉で目に入ったもののことであるはずです。それは、どんなものでしょうか。
 個人同士のやりとりで使われる言葉ではなく、新聞やテレビなどから伝わってくる言葉のはずです。私がこの連載コラムで取りあげているのは、新聞などに書かれた言葉で「本来とは違う」言葉やその用法の例です。
 一般の人から見れば、「本来の意味とされるものと違う」言葉遣いを新聞などがしているのを見て、違和感を覚えつつも、そんな使い方をしてもよいのだろうという気持ちが、しだいに強くなっていっているのです。そして、新聞などの言葉遣いを「乱れ」と感じないで、「変化」と感じているのです。現今は、新聞の言葉の乱れが顕著になっているのです。
 例えば、この記事の見出し「国語 乱れてなくない?」というような言い方は、本来の正しい表現ではありませんから、新聞がそんな表現を率先して使ってはいけません。新聞は、人々に正しい日本語をきちんと示す姿勢を堅持しなければなりません。
 言葉は時代の流れとともに変化をしていきます。それは当然のことです。けれども新聞は、言葉の変化の先頭を走る必要はありません。言葉の変化の先頭を新聞が走れば、言葉の乱れを振りまいているということになりかねません。

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