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2020年11月20日 (金)

ことばと生活と新聞と(273)

「ふつう」とは、格別にという意味か


 自分が作った料理に対して「普通に美味しい」と評価されたら、嬉しく思うでしょうか、残念な気持ちになるでしょうか。「普通に美味しい」とは、美味しさが普通、すなわち中級ということになるように思います。人並みの料理が作れるようになったと喜ぶ場合もあるでしょうし、人並みのもの作れなかったと落ち込むこともあるかもしれません。
 漢字の「普通」ではなく、平仮名で「ふつう」と書けば、異なった意味を持つのでしょうか。テレビ番組を紹介する、こんな記事がありました。

 日本一ふつう美味しい植野食堂   ★BSフジ 夜7:00
雑誌編集長の植野広生さんが、この料理ならばこの店が日本一だと信じて疑わない店を訪れてレシピを聞き、店主と一緒に作る。今回は東京都豊島区池袋の店の調理場へ。ナスと旬の野菜の料理「なすミソ」は、無駄な物をそぎ落とした店主の人生そのものだ。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年10月16日・朝刊、14版、19ページ、「きょうの番組から」)

 番組名を考えたのはテレビ局ですが、記事を書いた人は「ふつう」という言葉にどのような意味が込められていると思ったのでしょうか。
 番組内容の説明を見ると「植野広生さんが、この料理ならばこの店が日本一だと信じて疑わない店を訪れてレシピを聞き、店主と一緒に作る」と書かれています。普通(中級)という段階での「日本一」ではなく、最上級という意味での「日本一」なのでしょう。「ふつう美味しい」とは、格別に美味しいという意味のようです。
 いつから、「ふつう」はこのような意味で使われるようになったのでしょうか。こういう意味が、もうすぐ国語辞典にも載るようになるのでしょうか。
 テレビが日本語の混乱を取り仕切り、新聞はそれに対して何も感じないような社会に変化しつつあるのでしょうか。
 政治や経済の現状に対して厳しい批判の目を向ける新聞が、言葉の有様については何の批判的な姿勢を持たないことが不思議に思われます。新聞社同士でも、テレビ局に対しても、あるいは新聞社の社内でも、言葉遣いに対して厳しい目を持って指摘し合うことが必要だと思います。

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