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2020年11月21日 (土)

ことばと生活と新聞と(274)

既知の略語と同じ「DX」


 〈「未知数X」に情報革新のヒント〉という見出しで、「DX」という言葉を説明する記事がありました。こんなことが書かれています。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務やオンライン会議の導入が加速しました。ネットを通じた重要な情報の集約や活用も、盛んになりました。そんな変化を支えるキーワードは、「DX」です。
 DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。訳して「デジタル化による変革」。情報通信技術を発展させて使いこなし、社会生活の向上を目指すものです。2018年に経済産業省がDXの必要性や基準を示し、企業などが取り組み始めています。
 英語のつづりはDigital Transformationですが、見聞きする略称はDX。なぜDTとは言わないのでしょうか。 …(中略)…
 trans→across→cross→Xという連想から、いつしかtransをXと表記する慣習ができたというのです。DXという呼び名には、一種の言葉遊びが隠されていたわけです。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年11月14日・朝刊、13版、13ページ、「ことばサプリ」、小汀一郎)

 「経済産業省がDXの必要性や基準を示し、企業などが取り組み始めています。」とありますが、DXという略称を経済産業省が示したのではないようですね。DTではなくDXとなった理由が詳しく書かれていて、それは理解できますが、どうしてこんな略称を使う必要があるのかということは納得できません。
 「デジタルトランスフォーメーション」という文字数の多い言葉を略してDXと書けば、新聞の見出しなどでは好都合であることはよくわかります。けれども、そんな理由だけで、こんな略語を広めないでほしいと思います。DXとはどういう意味が込められた言葉であるのかということが理解されないままで、略語が広がっていく可能性があります。「デジタルトランスフォーメーション」という言葉では何のことか分からない人も多いと思います。訳すと「デジタル化による変革」になるということであるのなら、その言葉(日本語)を使うべきです。その言葉の方がイメージを浮かべやすいと思います。
〈「未知数X」に情報革新のヒント〉という見出しを書いた気持ちは理解できます。けれども、情報革新のスピードの速さと同じように、アルファベット語導入のスピードも速くなり、日本語破壊が加速度的に進展しようとしています。新聞は、そういう実情に警告を鳴らすという役割を捨てて、日本語破壊を助長しようとしているのです。
 言うまでもないことですが、DXという略語は既に使われています。デラックス(deluxe)ということをDXと書く習慣があります。海外放送などの遠距離受信という意味でも使われているようです。そういうことには目を向けないで、DXという表記に、さらに新しい意味を重ねて使おうとしているのです。
 DXなどという新語を定着させようとするのは、情報革新という美名のもとで、既存の言葉を破壊しようとする企みのように見えてきます。

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